星空撮影のときなど、光害の少ない場所を追い求めていくと、標高の高い場所や山奥など、夜間になるとかなり気温の下がる場所に行ってしまうことがあります。また、冬期ですと、日中でも寒いですが、カメラのカタログに表記された温度には全く届かなかったりするような場合もあります。アメリカのロサンゼルスとラスベガスの間にあるデスバレー国立公園とかですと、気温が高過ぎちゃったりしますし、冬場の北海道とかですと、気温が低く過ぎちゃったりします。ワタシの場合、スペックシートより温度が高いという状況はなかなかないので、今回は気温が低すぎちゃったときのシチュエーションについて書いてみたいと思います。
山の上は日中でも寒い
ワタシは星空の撮影をするのが好きなので、わりと山に行ったりします。登山が目的のときは歩いて登ったりますが、重たい機材を持って登るのはけっこう大変だったりします。クルマはおろか運転免許すら持っていないワタシの場合、キホン公共の交通機関でいけるところを探していくのですが、これだと、一晩現場に張り付いていないといけないことになります。これがけっこう大変だったりするので、山小屋など、現場の周りに宿泊施設があれば、そこを予約して、宿泊を伴う遠征となることも多いでしょうか?また、だれかがクルマを出してくれるのであれば、寒くなったらクルマに逃げるという逃げ道を確保して撮影することが多いですね。有名な観光地の一つである長野県の千畳敷カールの場合、宿泊施設は標高700mくらいのところにあり、バスでしらび平というところまで行って、ロープウェイに乗り、千畳敷カールまで出るのですが、その千畳敷カールの標高が2,612mあります。
この場合、標高差が1,900mほどあり、仮に、宿泊施設のある場所が気温10度だったとしても、千畳敷カールの気温は氷点下になっている計算となります。標高が100mあがると、気温は0.6度下がるといわれていますので、標高差1,900mというのはとてつもなく気温が下がることを意味します。山頂に着いて、カメラバッグからカメラを出し、レンズを装着すると、気温差でレンズが曇ってしまうことがあります。これは望遠鏡でもよくあるのですが、鏡筒内の温度と外気温の気温差があまりにもあり、それが原因で起こってしまうことなのですが、この場合、しばらくカメラを寒空の元においておかないといけません。
カメラごと暖かな建物の中に逃げてしまうと、今度はレンズプロテクターが曇ってしまったり、鏡筒の温度も上がってしまうため、寒いところでしばらくガマンしていないといけないということになります。こんなシチュエーションのときには、ソリューションとして、レンズヒーターという便利なグッズがあるので、それを持っていると、撮影にすんなり入ることもできます。注意事項としまして、レンズヒーターの長さはレンズ径の3.14倍以上ないといけません。
大口径レンズをご使用の方や、レンズ径の大きな単焦点レンズをご使用の場合、そのレンズに巻き付けられるだけの長さを有するレンズヒーターを購入する必要が出てきますので、十分にご注意ください。また、レンズヒーターはヒーターですので、電源が必要となります。できるだけ容量の大きなモバイルバッテリーも併せてご用意いただく必要があります。
日没・夜間・日の出前について
夏場もそうですが、冬場はとくに日が沈むとレンズやボディのスペックシートに記載された環境とは遠くかけ離れた気温になってきます。カメラやレンズもダメージを受けますが、撮影者にとってもかなり過酷な環境となります。JRの松本駅からシャトルバスに乗って、1時間ちょっとくらいのところに王ヶ頭ホテルという宿泊施設があります。標高は2,034m。かなり標高の高いところにあるホテルです。
ここは八ヶ岳中信高原高原国定公園の一部で、自然保護地域にも指定されているため、いわゆるマイカー規制区域内であり、キホン、ここに立ち入るには王ヶ頭ホテルのシャトルバスを利用するしかありません。王ヶ頭は美ヶ原高原にあり、ほかにも王ヶ鼻、茶臼山など、2,000mを超えるピークがいくつかある撮影スポットとなります。登山客もいるので、冬場はとくに足下に気をつけてアタックしていただきたいところですが、日没や夜間、日の出前を撮影しようとした場合、インターバル撮影で1時間ほどの撮影でも、上述したように、鏡筒の曇りや、バッテリーの消耗などにも気をつけたいところです。とくにバッテリーなどは交換できるタイミングで交換してしまったほうがいいかと思います。
スペアバッテリーに関する記事
予備バッテリーについて美ヶ原高原、王ヶ頭ホテルの周辺では日中でも気温はマイナス10度ほど、日の出前にはマイナス20度ほどまで冷え込むことがあるようですので、機材の心配もさることながら、ご自身も最大限の防寒をしないと撮影していられません。足下から頭までしっかりと防寒してから撮影に挑まれるといいと思います。
たとえば、シャッター速度が30秒、インターバルが3秒、設定上は33秒となりますが、で100枚撮影をしようとすると、1時間弱かかる計算となります。カメラやレンズ、三脚は凍てつき、レンズプロテクターには霜が降ります。アルミ製の三脚ですと、素手で触ろうとすると、手にくっついてしまうくらい冷たくなりますので、もちろんグローブは必需品ですが、カーボンファイバー製の三脚のほうがよろしいかと思います。
また、撮影が終わり、暖かな部屋に戻ると、ボディやレンズはボディやレンズはびしょびしょに濡れてしまいますので、レンズやボディにホコリが入らないようにしてから湿気をキチンと取る必要があります。レンズプロテクターやフィルターについてはワタシは自然乾燥をさせていますが、もしかすると、メガネふきみたいなもので湿気を拭き取ってあげたほうがいいのかもしれません。
富士山での星空撮影の話
クルマで行ける富士山の最高到達地点は、富士山の五合目になると思います。主要な富士山五合目は4つあります。
- 吉田ルート(富士スバルライン五合目)=標高2,305m
- 富士宮ルート(新富士宮口五合目)=標高2,390m
- 須走ルート(須走口五合目)=標高1,970m
- 御殿場ルート(御殿場口新五合目)=標高1,440m
上から3つは非常に標高の高いところにあり、④の御殿場ルートでもかなり高いところにありますね。富士山はもちろん世界文化遺産にも登録された日本一標高の高い山ですが、登山シーズンでないと、五合目までクルマで入ることができません。何合目なのかはちょっとわかりませんが、五合目にあがる道路が黄色いバリケードで封鎖されてしまい、その先にあがれないようになってしまいます。富士山が山開きをしている期間はさほど長くなく、7月から9月くらいまでだったと思います。つまり、この期間を外すと、富士山五合目での撮影は非常に難しくなります。不可能ではないのですが、きわめて困難と行ったところでしょうか?ナゼか?というと、自力で登らないといけないからです。重たい機材を担ぎ登るには大変体力が必要となります。また、山開きの季節は射手座があがる季節でもあり、天の川の撮影にも絶好のタイミングとなりますので、星空撮影で富士山に訪れるのであれば、富士山が山開きをしている期間がよろしいかと思います。
先にも述べたとおり、富士山五合目は非常に標高の高いところにあり、富士スバルライン五合目と新富士宮口五合目は、2,000m越えの五合目となるため、夏場でも夜間は非常に冷えます。ワタシが訪れたのは夏山シーズンが終わる9月のことでしたが、夜8時ころ寒さでギブアップして、撤収したときの気温は2度ほどしかありませんでした。富士山を下ると、ふつうに25度くらいの熱帯夜だったりするのですが、五合目恐るべしといったかんじになりますので、身体的にもそうですが、カメラやレンズなども寒い屋外から、暖房の効いたクルマの中などにしまう際、メンテナンスをしないとカビたりする恐れすらありますので、結露などがあれば、レンズやボディにホコリが入らないようにしてからキチンと湿気を拭き取るようにしましょう。
鴨川で夜景撮影していたときの話
真冬に千葉県の鴨川市で撮影をしていたときの話です。この日は風が冷たく、おそらく気温も0度以下だったと思います。D5300で星空を撮影しようと思っていたのですが、どういうわけか動かず、翌日銀座のニコンプラザへカメラを持ち紺がことがありました。ニコンプラザで一通り見ていただいたのですが、故障ということもなく、ニコンの肩も首をかしげるばかり。というのも、撮影時にはナゼかシャッターが切れず、なんども電源の入りきりをしたり、バッテリー交換をしたりしていたのですが、けっきょくその日はD5300では撮影することができず、一緒に持って行った、オリンパスのE-PL7というマイクロフォーサーズのカメラで星空撮影ができるのかというテストを行っただけになってしまいました。幸いにして、マイクロフォーサーズでも十分に撮影ができるということはわかってよかったのですが、肝心のD5300が動かずということで、ちょっと消化不良なかんじの遠征となりました。
原因がなんだったのかははっきりしませんが、スペックシートに記載された環境ではなかったので、それが原因だったのかもしれません。
まとめ
パンフレットなどに載っている動作環境はかなり厳しめだったりするような気もしますが、キホン、ここをベースに動作テストやなにかをしているのだと思いますので、スペックシートに記載のある規格外の環境での撮影においては、動作しないこともあるということを十分に認識して撮影に挑みましょう。
D850のスペックシート(ニコンホームページから抜粋)
また、雨や雪、結露などはカメラがイチバン苦手なところですので、濡れないように撮る、ぬらさないように撮る、濡れたらタオルなどでキチンと拭くということを習慣づけましょう。ワタシも、雨や雪の中での撮影がキライなわけではないので、ワタシ自身も気をつけないといけないところだと思います。せっかく買ったデジタル一眼レフカメラですので、ワタシは大切に使いたいというのもあり、今回こんな記事を書かせていただきました。ワタシの個人的な意見ですので、ワタシが書いた使い方にとらわれず、みなさまには撮影していただきたいですが、思い出のあるカメラやレンズというのもあろうかと思いますので、気がついたときにはメンテナンスもしてあげてくださいね。