ケンコーのスターリーナイトフィルターはいわゆる光害カットフィルターで、街路灯による色カブリを軽減して撮影することができるため、再現性が高く、また、RAW現像もしやすくなるというメリットがあります。星を撮るために購入したスターリーナイトフィルターですが、星空撮影に投入するのははじめてということで、今回は日光で実戦投入してみることにしました。
戦場ヶ原の入口へ
今回は日光、戦場ヶ原の入口、三本松園地の駐車場で撮影することにしました。道路をはさんで反対側に渡り、森の中を行くと写真によく出てくる戦場ヶ原のカンバンがあるところに出られるようですが、駐車場にいたほうが都合がよかったため、駐車場で撮影することにしました。クルマどころか運転免許すら持たないワタシがどのようにしてここまで行けたかというと、義理の兄がクルマを出してくれたからです。ふだんですと公共の交通機関を利用して行くことが多いのですが、星空の撮影の場合、機材のほか荷物が多くなるので、クルマがあるとかなり便利です。加えて、標高が1400mくらいある戦場ヶ原では8月のお盆を過ぎたあたりから夜になるとかなり肌寒くかんじられるようになります。みなさまご存じのとおり、星空の撮影は長時間の耐久線になりますので、クルマのそばで撮影ができると、カメラをしばらく放置して、クルマに避難することも可能なため、撮影が負担とは思いませんが、非常にラクに撮影することができるようになります。今回はそんなわけで三本松園地の駐車場で撮影するにいたりました。ちなみにですが、この三本松園地の駐車場のところにはバス停がありましたので、日光の駅からバスが出ているものと思われます。また、確認が必要ですが、テントがあるとクルマと同じように使うことができるので、便利だったりしますが、場所が駐車場ですので、NGでしょうか?
月没を待たずに撮影開始
この日は月の大きな日でした。月没の時刻は午前2時過ぎ。現地に到着したのは午前1時前でしたので、月没までにはちょっと時間がありましたが、空の暗さは十分。クルマを降りてみると、大きな月が出ているにもかかわらず、「こんなに星が出てたんだっ」と思わず声が出てしまうほどキレイに星が出ていました。これなら撮れるという判断で、ちょっとフライングで撮影をはじめることにしました。ワタシが持っているスターリーナイトフィルターはΦ82mm。24-70mmのいわゆる標準の大三元レンズに取り付けるために購入したため、星空を撮るときには広角レンズや魚眼レンズを使うのですが、今回は標準ズームレンズでも撮影してみました。ボディはニコンのD850を使いました。ということでまず、レンズプロテクターのみで撮影。
APS-C機で撮る場合、ISO3200、シャッタースピード30秒というのがひとつの撮り方でしたが、フルサイズ機ですと、過去の経験から明るすぎてしまいます。そこでISO1600、シャッタースピード15秒というのをフルサイズの設定としています。
星空撮影の設定方法
上述しましたが、星空撮影がはじめての方もいらっしゃるかもしれませんので、改めて書きます。
- マニュアルモード、マニュアルフォーカス、手ブレ補正オフ
- F値解放、ISO1600
- シャッタースピード15秒
D5300などDXフォーマットのカメラで撮影の場合、上記の設定だとちょっと暗いかもしれませんので、ISO感度を3200に、シャッタースピードを30秒に設定しなおしてみてください。F値解放というのは、レンズの一番小さな絞り値のことです。この数値が小さければ小さいほど、光を多く取り込めるため、星空を撮影するのに有利になります。キットレンズですとF3.5とかからのスタートだと思いますので、お使いのレンズをF値を一番小さな数値にして使いましょう。ズームレンズの場合、広角端を使います。18-55mmなら18mmにして使いましょう。星空と風景をセットで撮る星景写真の場合、広角なレンズを用いたほうが効果的に撮れるのですが、キットレンズでも十分に撮れますので、まずはお手持ちのレンズで試してもみてください。星空撮影でイチバン難しいのがピント合わせです。ファインダーをのぞいてもおそらく星は見えませんので、広角端にズームリングを回したら、レンズの距離目盛を無限遠に合わせて一枚撮ってみます。確認時に拡大鏡を使い、ピント調整がさらに必要であれば、さらに撮影しながら調整します。距離目盛のないレンズの場合、とりあえずピントリングを右に回るだけ回して一枚撮り、そこから徐々に左に戻してピント調整をします。ライブビューで星が見える場合、拡大鏡を使い、星が点になるところを見つけて、ピントリングを固定します。いずれの場合も背面液晶で拡大して、星が点に写るところを探します。遠くに木などが見えているときは、いったんそこでピントを合わせて、そのピントを基準に撮ってみるというのがカンタンかもしれません。ホワイトバランスをいじって撮影時の色味を変えることもできますが、現像をするのであれば、現像時にお好みの色味に変更することが可能ですので、JPEGとあわせてRAWデータでも記録するようにするといいと思います。
星空を撮影してみよう
比較してみた
今回はレンズプロテクターのみでの撮影とスターリーナイトフィルターをつけてみての撮影、スターリーナイトフィルターにプロソフトンフィルターをつけてみての撮影の3パターンを撮ってみました。プロソフトンフィルターとは明るい星がシャープに写りすぎないようにほどよくにじませ、色を強調することにより星を浮かび上がらせる効果があります。スターリーナイトフィルターとプロソフトンフィルターを重ねづけすることにより、色カブリをなくし、星空をドラマチックに撮影することができます。プロソフトンフィルター単独での撮影はしませんでしたが、発売元のケンコーのホームページでもこの2枚を重ねづけして撮影した写真が使われていましたので、相性がいいのは間違いないと思われます。ということで、比較する前に、それぞれの写真をご覧ください。
レンズプロテクターのみ
スターリーナイトフィルター使用
スターリーナイトフィルターにプロソフトンフィルターを重ねづけ
上の3枚の写真からまずはプロテクターのみとスターリーナイトフィルター使用時の比較です。
写真センターのスライダーを左右にスライドさせてください。左がレンズプロテクターのみの写真で、右がスターリーナイトフィルターをつけたときの写真です。空の色がだいぶ変わったことはおわかりいただけるかと思います。空の色が引き締まったため、星が見やすくかんじます。街路灯の色がこんなにも気になるのだと改めて思い知らされる部分であります。
スターリーナイトフィルターのみの写真とスターリーナイトフィルターにプロソフトンフィルターを重ねづけしてみたときの写真の比較です。
左がスターリーナイトフィルターのみ。右がスターリーナイトフィルターとプロソフトンフィルターを重ねづけした写真です。プロソフトンフィルターを重ねづけすることにより、星がにじみ、星座を浮きだたせてくれています。プロソフトンフィルターを重ねづけしたことで、見える星の数は減りますが、キレイに写すことができるようになりました。好みがあるかもしれませんが、ワタシ個人的にはスターリーナイトフィルターとプロソフトンフィルターを併用した写真のほうが好きです。
レンズプロテクターのみの場合とスターリーナイトフィルターにプロソフトンフィルター重ねづけした場合とで比較してみましょう。
左がレンズプロテクターのみ。右がスターリーナイトフィルターにプロソフトンフィルターを重ねづけしたときの写真です。みなさまはどちらがお好きですか?フィルター購入時の参考にしていただければ幸いです。
まとめ
この日は空の状態がとてもよかったので、インターバルタイマーでの撮影も試みました。インターバル撮影については別の記事に譲るとして、派手さに欠く秋の星空ですが、スターリーナイトフィルターおよびプロソフトンフィルターを利用することにより、星座を浮きだたせてキレイに撮影することができました。スターリーナイトフィルターは光害をカットしてくれるので、色がぶりを防ぎ、星を見やすくしてくれるという効果がありますので、プロソフトンフィルターを使わないまでも、星空撮影時には効果を発揮してくれるのは間違いありません。今回は星空撮影の設定についても書きましたが、この設定はいつも一緒なので、何回か撮影するうちに覚えてしまいます。ピント合わせがイチバン大変ですが、ここは一番大切なところですので、じっくりやっていきましょう。ワタシも過去になんども失敗しています。とくに寒い日などはおざなりになってしまいがちですが、ここをキチンとやることで星がキレイに撮れますので、めげずにキチンとやりましょう。これから星空撮影にはキビシイ時期になりますが、空が安定してきていい写真が撮れる季節でもありますので、防寒をしっかりとして、星空撮影をお楽しみください。キットキレイな星空に出会えますよ。